第18回「非公式黄リー教道場」へお越しいただき、ありがとうございます!
今回のテーマは「海洋エネルギー」です。
広大な海域や激しい波を利用した海洋エネルギーの導入は、エネルギー資源の乏しい日本が有する一筋の光明であり、同時に世界中から注目を集めています。
というわけで、今日も『黄リー教』のトレーニングをしながら、ついでに日本の再生可能エネルギーの未来について学んでみましょう!
ルールは以下の通り。
- 下記の英文(100語程度)を読んで、構造図を考える
- 理解度をチェックする
- 和訳をチェックする
- 構造図・解説をチェックする
- 面白かったらお友達に紹介する
- 面白くなくても文句を言わない
- 間違いを見つけたら、優しく指摘してあげる
本文
Marine Energy for Japan’s Sustainability
In the wake of the 2011 Tohoku earthquake and the subsequent Fukushima Daiichi nuclear disaster, Japan has witnessed rapid advancements in the development of renewable energy sources, notably solar and wind power, which, while achieving partial success, are beginning to exhibit inherent limitations.
Amid such circumstances, “marine energy” emerges as a significant beacon of hope for Japan. An island nation surrounded by seas, Japan is rich in marine energy resources; wave, tidal, and ocean current power are all viable, with the formidable currents of the Kuroshio and Tsugaru Straits holding particularly substantial potential.
Exploiting these marine energy resources could enable Japan not only to expand its renewable energy adoption but also to improve its energy self-sufficiency.
理解度チェック
次の内容が正しければT、正しくなければF、言及されていなければNを選んでください。
※タップすると解答が表示されます。
Solar power in Japan is expected to continue its rapid expansion in the future.
F
第1段落に「which, while achieving partial success, are beginning to exhibit inherent limitations.」とあるように、太陽光発電の開発には陰りが見えています。
Surrounded by the sea, Japan is well-suited for marine energy development.
T
第2段落で「An island nation surrounded by seas, Japan is rich in marine energy resources」と述べられているように、島国である日本は海洋エネルギー開発に適しているといわれています。
Developing marine energy involves significant costs and faces various obstacles to implementation.
N
これについて本文では述べられていませんが、海洋エネルギーの開発にはコストを含めさまざまな課題が立ちふさがっています。
和訳
日本のサステナビリティを生み出す海洋エネルギー
2011年の東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故を受け、日本では太陽光と風力発電に代表される再生可能エネルギーの急速な開発が進んだ。しかし太陽光と風力発電は、部分的な成功を収めつつも、それらに内在する限界を見せ始めている。
そのような状況において、「海洋エネルギー」は日本の重要な希望の光として注目されています。周囲を海に囲まれた島国である日本は、海洋エネルギー資源に恵まれている。波力、潮力、海流発電のいずれも実現でき、黒潮や津軽海峡の強力な海流は特に大きな可能性を秘めている。
これらの海洋エネルギー資源を利用することで、日本は再生可能エネルギーの選択肢を拡大するだけでなく、エネルギー自給率も改善できるだろう。
下記の構造図・解説は、あくまで「英語学習者」である管理人によるものです。誤情報が含まれている可能性もあるため、十分にご注意ください(コメント欄またはTwitter(X)にてご指摘いただけますと幸いです)。
なお構造図・解説はすべて『黄リー教』の内容に基づいています。詳細は『黄リー教』および副教材をご確認ください。
構造図
cj…従属接続詞
+ad…誘導副詞
+S…真主語
-S…仮主語
+O…真目的語
-O…仮目的語
解説
第1段落
In the wake of the 2011 Tohoku earthquake and the subsequent Fukushima Daiichi nuclear disaster, Japan has witnessed rapid advancements in the development of renewable energy sources, notably solar and wind power, which, while achieving partial success, are beginning to exhibit inherent limitations.
in the wake of Aは「Aの後に、Aに続いて」という意味のidiomです。the 2011 Tohoku earthquake~nuclear disasterがAに当たります。
「時・場所witnessed O」で「時・場所にOがあった」という意味を表します。よって「Japan has witnessed rapid advancements…」は「日本で…の急速な進歩があった」と訳すと、自然な日本語になりますね。なおwitnessの代わりにseeを用いることもよくあります。
solar and wind powerは「名詞が余っている」状態で、働きは(renewable)energy sourcesの同格です[黄リー教: P90 6-11, P91 6-12]。
whichは非制限用法の関係代名詞です[黄リー教: L13]。外側はwhich~limitationsが形容詞節でsolar and wind powerを修飾、内側の働きは主語です。
「while achieving partial success」は副詞節で、whichの作る関係詞節内に挿入されています。SVが省略されているため、「副詞節の定型的な省略形」か「従属接続詞+分詞構文」の可能性があります[黄リー教: P193, TOEIC精読講義: P71]。文意を踏まえると、現在も引き続き太陽光と風力発電の開発は進んでいることから、「進行形」の意味で捉えた方が良さそうですね。よって構造図では「they(solar and wind power) are」の省略された「副詞節の定型的な省略形」と解釈しています。
to exhibitは不定詞名詞用法で、are beginningの目的語になっています[黄リー教: P373 18-8]。
inherentは「内在した」という意味ですが、これに関する具体的な説明が文章内にありません。英文をそのまま訳すと「太陽光と風力発電が内在的に抱える限界」となり、「そもそも太陽光と風力発電というもの自体が本質的に抱えている限界」のように解釈できると思います。しかし太陽光と風力発電はそれぞれが世界で最も普及している再生可能エネルギーのひとつであり、今もなお各国で積極的に導入が進んでいます。太陽光と風力発電自体の持つ限界はどのような条件下でも等しいはずですから、それを理由に普及が進んだり、進まなかったりするのは不自然です。そこで前後の文脈を踏まえると、ここでいうinherent limitationsは、太陽光と風力発電自体の抱える限界ではなく、「日本における太陽光と風力発電の開発が内在的に抱える限界」を表していることが分かります。同じ太陽光・風力であっても、日本は地形や気候条件的にこれらの開発に適しているとはいえません。導入が容易かつエネルギー生産の効率的な国に比べれば、普及のポテンシャルははるかに小さいと考えられます。恐らくこのような日本の抱える前提条件を、inherent limitationsを用いて表しているのでしょう。
第2段落
Amid such circumstances, “marine energy” emerges as a significant beacon of hope for Japan. An island nation surrounded by seas, Japan is rich in marine energy resources; wave, tidal, and ocean current power are all viable, with the formidable currents of the Kuroshio and Tsugaru Straits holding particularly substantial potential.
「Japan is rich in marine energy resources」は完全な文であることから、island nationは「名詞が余っている」状態であることが分かります。この文ではAn island nationの前にBeingが省略されていて、island nationはBeingの補語になっています[黄リー教: P216 12-12]。
surroundedは過去分詞形容詞用法で、island nationを修飾しています[黄リー教: P423 20-5]。
wave, tidal, and ocean current powerは厳密にいうと、wave, tidal, ocean currentの3つをandでつなぎ、それぞれがpowerを修飾しています。しかしwaveとocean currentはそれぞれwave power, ocean current powerという名詞の一部であり(「名詞+名詞」[黄リー教: P16 2-5])、それに対しtidalは形容詞でpowerを修飾しています。andなどの等位接続詞は同じ「働き」の語・句・節をつなぐことから、この構造はルールに反しているようにも感じられます。しかし「名詞+名詞」の形では、実質的な機能として、前の名詞が形容詞のように後ろの名詞を修飾している(名詞修飾)と解釈されます。よってwave, tidal, ocean currentの実質的な働きは同じ(名詞修飾)であることから、これらの3つをandでつなぐことに問題はないと考えられそうです。なお構造図では上記の内容を細かく記載することが難しいため(またほとんど実益もないため)、全体を1つの主語としてまとめています。
allは「名詞が余っている」状態で、働きはwave, tidal, and ocean current powerの同格です。
「with the formidable currents~potential」は「with構文」と呼ばれるもので、「黄リー教サポート情報」に説明があります。独立分詞構文の先頭にwithが付いたものと解釈すると、the formidable currents(of the Kuroshio and Tsugaru Straits)が意味上の主語、holdingは分詞構文で、前の働きが文修飾、後ろの働きが③、(particularly substantial)potentialが動詞の目的語になります。構造図では全体を副詞句として処理するだけで大丈夫です。
第3段落
Exploiting these marine energy resources could enable Japan not only to expand its renewable energy adoption but also to improve its energy self-sufficiency.
Exploitingは動名詞で、前の働きは主語です[黄リー教: P362 18-2]。
to expandとto improveはそれぞれ⑤enableの補語で、not only A but also BのA, Bに当たります[黄リー教: P293 15-8]。
余談
国土面積が小さく、山岳地帯の多い日本は、太陽光や風力発電に適しておらず、再生可能エネルギーの導入が難しい国の一つと言われています。
莫大な導入費用を要する割に大規模開発が難しいため、コストパフォーマンスが極めて悪いからです。
しかし日本は確かに陸上の地形・気候に恵まれていないものの、島国特有の「海の資源」では世界有数の豊かさを誇ります。実際に日本の海域・海岸は世界6位の広さ・長さを持ち、「海洋エネルギー」に含まれる様々な発電技術を利用できるそうです。
このような「逆転の発想」は実に小気味いいものであり、同時にエネルギー資源の乏しい日本にとっては大きな希望の光になるかもしれません。
再生可能エネルギー開発で後れを取っている日本が、新たな可能性を前に、これからどのような逆転劇を見せるのか。今後の動向に期待が高まりますね。
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