第12回「非公式黄リー教道場」へようこそ!
今回のテーマは「犬とストレス」です。
「寿命が延びる」「認知症予防になる」など、犬の「健康効果」は年々注目を集めていますが、今回は「犬が人間のストレスに与える影響」についてまとめてみました。
というわけで、いつものように100語の英文で『黄リー教』のトレーニングをしながら、犬に関する豆知識を増やしましょう!
ルールは以下の通り。
- 下記の英文(100語程度)を読んで、構造図を考える
- 理解度をチェックする
- 和訳をチェックする
- 構造図・解説をチェックする
- 面白かったらお友達に紹介する
- 面白くなくても文句を言わない
- 間違いを見つけたら、優しく指摘してあげる
本文
The Unmatched Stress-Relieving Power of Paws
Recent studies reveal that being with dogs can alleviate stress and anxiety more effectively than friends, lovers, partners, or family members. Petting a dog releases oxytocin, the “love hormone,” and reduces cortisol, the stress hormone, fostering a sense of calm and well-being.
Unlike humans, dogs offer unwavering loyalty and non-judgmental support. They listen without interrupting or criticizing, providing unique psychological security. Human relationships, while valuable, can sometimes add stress due to opinions and judgments. In contrast, dogs consistently offer pure, uncomplicated companionship.
Their presence encourages physical activity, boosting mental health, and provides a sense of purpose and routine.
In a stress-filled world, dogs offer unparalleled emotional and mental health benefits, making them essential allies against anxiety and depression.
理解度チェック
次の内容が正しければT、正しくなければF、言及されていなければNを選んでください。
※タップすると解答が表示されます。
Dogs can reduce stress more effectively than humans.
T
第1段落で「Recent studies reveal that being with dogs can alleviate stress and anxiety more effectively than friends, lovers, partners, or family members.」と述べているように、犬は人間よりも(しかも近しい相手よりも)ストレス軽減効果の高いことが分かります。
Humans provide opinions and criticism, so they have a higher stress-relieving effect than silent dogs.
F
第2段落に「They listen without interrupting or criticizing, providing unique psychological security.」「Human relationships, while valuable, can sometimes add stress due to opinions and judgments.」とあるように、しゃべらない犬が心理的な安心感を与えてくれる一方で、人間による意見や批判はかえってストレスを増やす可能性があります。
The paw pads of dogs have a stress-relieving effect.
N
肉球のストレス軽減効果は本文では言及されていません。しかし間違いなくストレスを軽減してくれるはずです。
和訳
肉球の比類なきストレス軽減効果
最近の研究によると、友人や恋人、パートナー、家族よりも、犬と一緒にいる方が効果的にストレスや不安を軽減できることが明らかになった。犬を撫でると、「愛情ホルモン」であるオキシトシンが分泌され、ストレスホルモンであるコルチゾールが減少し、それによって穏やかで幸福な気持ちが促される。
人と違い、犬はゆるぎない忠誠心と批判的でないサポートを提供する。彼らは邪魔したり批判したりせずに耳を傾けてくれるため、それが独特の心理的安心感を与えてくれる。
人間関係は、有益ではあるが、意見や判断をされることで、時にかえってストレスが増すこともある。それに対し、犬は絶えず純粋で単純な触れ合いをもたらしてくれる。
彼らの存在が、身体的な活動を促進し、心の健康を高め、さらに生きがいやゆるぎない日常の感覚を生み出している。
ストレスに満ちた世界において、犬は他に類を見ない感情的・精神的健康をもたらし、不安や憂鬱と戦うためのかけがえのない仲間になってくれる。
下記の構造図・解説は、あくまで「英語学習者」である管理人によるものです。誤情報が含まれている可能性もあるため、十分にご注意ください(コメント欄またはTwitter(X)にてご指摘いただけますと幸いです)。
なお構造図・解説はすべて『黄リー教』の内容に基づいています。詳細は『黄リー教』および副教材をご確認ください。
構造図
解説
第1段落
Recent studies reveal that being with dogs can alleviate stress and anxiety more effectively than friends, lovers, partners, or family members. Petting a dog releases oxytocin, the “love hormone,” and reduces cortisol, the stress hormone, fostering a sense of calm and well-being.
reveal that…のthatは従属接続詞です。外側はthat~membersが名詞節でrevealの目的語になっています[黄リー教: P321 17-4]。
beingは動名詞で、前の働きは主語、後ろの働きは①です[黄リー教: P362 18-2]。
thanは従属接続詞です。than~membersが副詞節で、moreを修飾しています。thanの内側では、主節との共通部分が徹底的に省略される傾向があります。今回の英文では「than being with friends, lovers, partners, or family members can alleviate stress and anxiety」の省略と考えられそうですね。
Pettingは動名詞で、前の働きは主語、後ろの働きは③です。
“love hormone”は名詞が余っている状態で、oxytocinと同格です[黄リー教: P91 6-12]。同様にstress hormoneはcortisolと同格関係にあります。
fosteringは現在分詞の分詞構文です[黄リー教: P208 12-7]。前の働きは文修飾で、「付帯状況」を表しています(『黄リー教』にはありませんが、「結果」と考えても構いません)。「犬を撫でることで、愛情ホルモンが増え、ストレスホルモンが減り、その結果として穏やかで幸福な気持ちが促される」と説明しているわけですね。あるいは単純に「and fosters…」を表している(単に説明を追加している)と考えても問題ありません。なお前の働きは「動詞修飾」でも大丈夫です。付帯状況の分詞構文に関する詳細は第1回でまとめています。
第2段落
Unlike humans, dogs offer unwavering loyalty and non-judgmental support. They listen without interrupting or criticizing, providing unique psychological security. Human relationships, while valuable, can sometimes add stress due to opinions and judgments. In contrast, dogs consistently offer pure, uncomplicated companionship.
interruptingとcriticizingはどちらも動名詞で、withoutの目的語になっています。
providingは分詞構文で、前の働きは文修飾、意味は「付帯状況」です。「They listen without interrupting or criticizing(犬は邪魔したり批判したりせずに耳を傾ける)」という主文の内容を受け、「それがユニークな心理的安心感をもたらしている」と説明を加えています。なお前の働きは動詞修飾でも構いません。
whileは従属接続詞で、副詞節を作っています。意味は譲歩(~だけれども)です。文脈を踏まえると、「人間関係というもの自体に価値がある」ではなく、「ストレスを軽減させるという点で、人間関係にも価値はある=効果はある」という内容を表しているのでしょう。「犬の場合と同様に、人間関係もストレスを軽減させるうえで効果はあるだろうが、一方でやり方を間違えると逆効果にもなる」と言いたいわけですね。なお「while valuable」は「while they(human relationships) are valuable」の省略と考えられます(副詞節の定型的な省略形[黄リー教: P193])。
第3段落
Their presence encourages physical activity, boosting mental health, and provides a sense of purpose and routine.
boostingは分詞構文で、意味は「付帯状況」です。犬の存在が身体的活動(一緒に遊ぶ、散歩など)を促し、それが心の健康にもつながっていることを表しています。
「a sense of purpose」は「生きがい」という意味です。「a sense of routine」は「ルーティーン化している感覚=日常のパターンが決まることで、精神的な安定感が増す」という内容を表す言葉なのだそうです。辞書に掲載がなく、日本語にピタリと当てはまる訳語はなさそうなので、その都度うまく訳す必要がありそうですね。
第4段落
In a stress-filled world, dogs offer unparalleled emotional and mental health benefits, making them essential allies against anxiety and depression.
stress-filled worldは「名詞1-③のp.p. 名詞2」の形で、「名詞1によって③された名詞2」という意味(「ストレスに満たされた世界」)を表します[TOEIC精読講義: P167]。
makingは分詞構文で、意味は「付帯状況」です。犬が「他に類を見ない感情的・精神的健康をもたらす」と先に主文で述べ、それがもたらす影響(犬を不安や憂鬱と戦うためのかけがえのない仲間にする)を後から付け加えているわけですね。
余談
「犬は人間のストレスを和らげてくれる」という点は、誰にでも容易に想像が付きそうですよね。しかし友人や家族よりもストレス軽減効果が高い、という事実には驚きました。
ストレスを蓄積しないための定石として、「誰かに話をする」という手段が真っ先に挙げられます。しかし記事を読む限り、その方法を実現するためには、少なくとも2つの「絶対的安心感」が条件となりそうです。
つまり、
- 相手自身に対する絶対的安心感(話を打ち明けるに当たり、信用に足る人物か、話すことによって自分の評価が下がらないか、相手を怒らせないか、など)
- 相手の反応に対する絶対的安心感(真剣に聞いてくれるか、余計なアドバイスや非難をされる恐れはないか、など)
2つの条件を完璧に満たしてくれる話し相手(人間)なんて…果たして実在するのでしょうか?そう考えると、いかに犬の存在が我々にとって理想的であるか…ヒシヒシと実感できますね。
記事の結論にもあったように、このストレス社会を生き抜くうえで、犬は最強の味方になってくれるかもしれません。犬が人間をパートナーとして選んでくれたことに、改めて感謝をしなければいけませんね。
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