第10回「非公式黄リー教道場」へお越しいただき、ありがとうございます!
今回のテーマは『指輪物語』!
『指輪物語(ロードオブザリング)』といえば、ファンタジー文学の金字塔であり、その後の作品に多大な影響を与えた「原点」「王道」ともいえる存在です。
しかし今回の英文では、『指輪物語』が典型的なファンタジーと「異なる」点に注目してみました。
さっそく英文を読んで、指輪物語のユニークな魅力に触れてみましょう!
ルールはいつもの通り。
- 下記の英文(100語程度)を読んで、構造図を考える
- 理解度をチェックする
- 和訳をチェックする
- 構造図・解説をチェックする
- 面白かったらお友達に紹介する
- 面白くなくても文句を言わない
- 間違いを見つけたら、優しく指摘してあげる
本文
The Two Charms of “The Lord of the Rings”
“The Lord of the Rings” is widely regarded as a pinnacle of fantasy literature, captivating readers with its profound themes and, also, two particularly unique elements.
Firstly, the story’s ultimate goal is to destroy the Ring, diverging from typical epic fantasies where heroes usually defeat evil through battle. This “resolution not through violence” is something today’s entertainment world might easily forget.
The second element is that destroying the Ring represents renouncing one’s perilous cravings. The theme of desire leading to ruin also appears in Tolkien’s previous work, “The Hobbit,” reflecting a philosophy akin to Buddhist thought.
“The Lord of the Rings” transcends mere adventure, offering profound philosophical insights into human nature, while celebrating self-sacrifice and spiritual growth over power and glory. This timeless masterpiece still continues to touch hearts worldwide.
理解度チェック
次の内容が正しければT、正しくなければF、言及されていなければNを選んでください。
※タップすると解答が表示されます。
The ultimate goal of the journey in “The Lord of the Rings” is to destroy the Ring, which is the same as the typical fantasy plot development.
F
第2段落にあるように、指輪物語の旅の目的は指輪を破壊することですが、それは典型的なファンタジー小説の展開と一線を画しています。
“The Hobbit,” like “The Lord of the Rings,” depicts the peril of desire.
T
第3段落で「The theme of desire leading to ruin also appears in Tolkien’s previous work, “The Hobbit,”」とあるように、前作の『ホビット』でも欲望の恐ろしさが描かれています。
Tolkien’s greatest achievement is the creation of the Hobbit race.
N
本文では言及されていませんが、「ホビット」という種族の創造は、トールキンの最大の功績といわれています。
和訳
『指輪物語』の二つの魅力
『指輪物語』はファンタジー文学の最高峰として広く認識されており、深遠なテーマと、特に2つのユニークな要素が読者を魅了している。
1つは、物語の最終的な目標が指輪を破壊することにあり、これは英雄たちが戦いを通じて悪を打ち破るという典型的な叙事詩ファンタジーと一線を画している。この「暴力を介さない結末」は、現在のエンターテイメント界がつい忘れてしまうものかもしれない。
2つ目の要素は、指輪を破壊することが、危険な欲望の放棄を象徴している点である。欲望が破滅を招くというテーマは、トールキンの前作『ホビット』にも描かれており、仏教思想にも似た哲学を反映している。
指輪物語は単なる冒険譚を超え、人間の本質に迫る深遠な哲学的洞察を提供し、また権力や栄光よりも自己犠牲の精神や心の成長を賛美している。この不朽の名作は、今もなお世界中の人々の心を揺さぶり続けている。
下記の構造図・解説は、あくまで「英語学習者」である管理人によるものです。誤情報が含まれている可能性もあるため、十分にご注意ください(コメント欄またはTwitter(X)にてご指摘いただけますと幸いです)。
なお構造図・解説はすべて『黄リー教』の内容に基づいています。詳細は『黄リー教』および副教材をご確認ください。
構造図
解説
第1段落
“The Lord of the Rings” is widely regarded as a pinnacle of fantasy literature, captivating readers with its profound themes and, also, two particularly unique elements.
regardは「⑤O as C」の形をとる動詞の1つでしたね[黄リー教: P60 5-10]。この文では受身で用いられています。受身であってもasが残るため、「⑤O as C」の形を知っていなければ、このasの正体(Cの印)が分かりません。「⑤O as C」で使う6つの動詞をしっかりと覚えておきましょう。
captivatingは現在分詞の分詞構文で、前の働きは動詞修飾(is regarded)、後ろの働きは③です[黄リー教: P208 12-7]。意味は「付帯状況」で、主文に説明を追加しています(and captivatesと同義)。なお「付帯状況」「言い換え」の場合は、動詞単体ではなく主節の一部や全部を修飾していると考えることもできます。そのため動詞修飾の矢印を書かなくても大丈夫です(詳細は第1回でまとめています)。
andはthemesとelementsをつないでいます。構造的には「its profound themes」と「two particularly unique elements」が同列にあり、それぞれがcaptivatingの理由を表しています。しかし「two particularly unique elements」の前にはコンマやalsoが並んでいますね。これは、読み進めれば分かるように、以降の文章がこの2つの要素について述べているからです。本来であれば「two particularly unique elements」は「its profound themes」に内包されると思います。しかしこの記事では「two particularly unique elements」について詳しく言及するため、あえて2つの要素を「its profound themes」から切り離し、合図代わりに文末に強調する形で加えているわけですね。実際に以降の段落を見ると、FirstlyとThe second elementで始まっているため、それぞれの段落で2つの要素を説明していることが分かります。
第2段落
Firstly, the story’s ultimate goal is to destroy the Ring, diverging from typical epic fantasies where heroes usually defeat evil through battle. This “resolution not through violence” is something today’s entertainment world might easily forget.
to destroyは不定詞名詞用法で、補語の働きをしています(goal = to destroyの関係)[黄リー教: P373 18-8, 374の一番下の例文]。be to doには、助動詞のbe to、不定詞名詞用法(Sは~することである)、不定詞副詞用法(Sは~するためにある)の3つの可能性があり、基本的に文意で判断することになります。
divergingは現在分詞の分詞構文で、「付帯状況」を表しています(and divergesと同義)。
whereは関係副詞で、外側はwhere~battleが形容詞節で名詞修飾(fantasies)、内側の働きは動詞修飾(defeat)です[黄リー教: P263 14-1]。whereの先行詞は「場所を表す名詞」ですが、実際にはかなり幅広く用いられ、今回のように抽象的空間や概念の領域を先行詞とすることもあります。
「something today’s entertainment world might easily forget.」のsomethingとtoday’sの間には、関係代名詞のwhichが省略されています[黄リー教: P250 13-9]。today’s~forgetが形容詞節でsomethingを修飾、省略されたwhichの内側の働きはforgetの目的語です。
第3段落
The second element is that destroying the Ring represents renouncing one’s perilous cravings. The theme of desire leading to ruin also appears in Tolkien’s previous work, “The Hobbit,” reflecting a philosophy akin to Buddhist thought.
that destroying~cravingsは従属接続詞thatの作る名詞節で、補語の働きをしています(The second element = that節という関係)[黄リー教: P321 17-4]。
destroyingは裸のingで動名詞、前の働きは(構造上の)主語です[黄リー教: P362 18-2]。renouncingも動名詞で、前の働きは動詞の目的語です。
「(The theme) of desire leading (to ruin…)」のleadingも動名詞で、前の働きは前置詞の目的語。desireが意味上の主語になっています[黄リー教: P368 18-5]。ofは「同格のof」と考えられそうですね(~というテーマ)[黄リー教: P368]。組み合わせると「欲望が破滅に導くというテーマ(欲望が破滅を招くというテーマ)」となります。
reflectingは現在分詞の分詞構文で、「付帯状況」を表します(and reflectsと同義)。
第4段落
“The Lord of the Rings” transcends mere adventure, offering profound philosophical insights into human nature, while celebrating self-sacrifice and spiritual growth over power and glory. This timeless masterpiece still continues to touch hearts worldwide.
offeringは現在分詞の分詞構文で、動詞修飾(transcends)。意味は「言い換え」で、「transcends mere adventure」の表す内容を具体的に説明しています。
while celebratingには「副詞節の定型的な省略形」と「従属接続詞+分詞構文」の可能性があります[黄リー教: P193, TOEIC精読講義: P71]。「副詞節の定型的な省略形」の場合は「while it is celebrating」の省略を意味するため、「進行形」になります。しかしこの文に進行形の意味はそぐわないため、構造図では「従属接続詞+分詞構文」として処理しました。celebratingを分詞構文とした場合、働きは動詞修飾になりますが、動詞にはtranscendsとofferingの2つの候補があります。celebratingがtranscendsを修飾するのであれば、offeringと並列関係になるため、シンプルにandで結べばいいはずです。するとこの場合、transcendsをofferingが修飾し、さらにそのofferingをcelebratingが修飾している、と考える方が自然だと思われます。
stillの意味はcontinuesに内包されているため、stillがなくても意味は成立します。しかし『指輪物語』という古い作品が、現在もなお影響を及ぼしている点を強調する目的で、stillが置かれていると考えられます。
to touchは不定詞名詞用法で、continueの目的語になっています。
worldwideは副詞ですが、直前の名詞(hearts)を修飾できます。
余談
『指輪物語』は壮大なファンタジー作品であり、圧倒的なスケールのストーリー展開に目を奪われがちです。もちろん、それこそが『指輪物語』の魅力ですが、しかし細部に注目すると、そこにはさまざまな哲学的洞察が散りばめられています。
苦難の中で紡がれるキャラクターの言動は常に印象的で、現実世界の、現代社会を生きる私たちの心にすら、強く共鳴するものばかりです。
一方でそのような哲学的メッセージが、運命の力によって、物語の伏線として機能する点も見逃せません。
ハッキリとした善と悪の二項対立の中で、武力によって、最終的に善が悪を打ち破るという「単純」で「典型的」なエンターテイメント作品とは、かなり異なる性質を持っているといえそうですね。
また『指輪物語』の真の魅力は、作品以上に、J.R.R.トールキンの作り上げた背景世界にあるといわれています。
トールキンは「中つ国」の「地図」を用意しただけでなく、15の言語を開発し、古事記のような壮大な神話まで描いています。
表面的な文明・文化にとどまらず、各種族、人々の精神構造の根源に至るまで、緻密に創造したわけですね。
そのような重厚な(あまりに重厚すぎる)背景世界があったからこそ、『指輪物語』のような長大なストーリーを展開させることができたのでしょう。
『指輪物語』について語りたいことはいくらでもありますが、英語と少しも関係がないので、この辺でやめておきます。
それではまた、次回の非公式黄リー教道場でお会いしましょう!
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